Classici giapponesi con furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Leggi 日本婦道記 (にほんふどうき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.829 caratteri · 25 schermate
「もっとはやく知らせたかったけれど」と母はまだ夢でもみているような、とぼんとした表情でそう云った、「普通のときではない、良人が戦場へいった留守なのだから、息をひきとるまでは知らせてはならぬ、そう仰しゃってどうしてもおききにならなかったのでねえ」
通夜もさせてはならぬという遺言だった。そして短刀に添えて、おおぞらをてりゆく月しきよければ雲かくすともひかりけなくに、という古今集の尼敬信の歌をぬき書きして、「このこころ忘るべからず」としるした尺牘をのこしていって呉れた。伊緒は父のこころがよくわかるので、一刻ほど遺骸の伽をしただけで、かたみの品を抱いて雪のなかを帰って来た。
季節は寒に入った、雪のあとは、空気までがぱりぱりとしそうな凍てで、城下とその杭瀬川は陽ざかりにも張りつめた氷の溶けきれぬようなことが多かった。伊緒は襷をとるいとまもなかった、御上納の米を俵にしてだし、売る分の籾摺りをし、米搗き、焚木とり、むしろ編み、繩ない、そして蔬菜畑のせわなど、農家から賃ぎめで手つだいにくる老人を相手に、休むひまもなくはたらきとおした。郁之助は雪のあとで風邪をひき、稽古もやめてこもっていたが、姑のすぎ女は丈夫なので、「そうひとりでなにもかもおやりでは、からだを毀してしまいますよ」