Classici giapponesi con furigana
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にほんだっしゅつき
日本脱出記
大杉 栄
Leggi 日本脱出記 (にほんだっしゅつき) di 大杉 栄 (おおすぎさかえ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 76.254 caratteri · 151 schermate
そしてまた、それだからこそ、時々彼女を思いだしたのだろうと思う。リヨンではたった一人のそして停車場まで夜遅く送って来た女のことも、メーデーの前の晩会った女のことも、またいつも赤い帽子をかぶっていたところから僕が「赤帽」とあだ名していた女のことも、その他本当に一緒に寝た女のことは一度も思いだしはしなかった。
そんなことじゃないんだ。ただ春の心なのだ。本当にのどかな、のんびりとした呑気な気持なのだ。いつも忙がしい、そして大勢の人との交渉の多い生活をしている僕には、実際何の心配もないたった一人きりの牢やの生活ほどのうのうするところはないのだ。もっとも、それがあんまり長かったり、時々すぎたりしては、そうばかりも行くまいが。ことに春の日の牢の中はいい気持だ。そして、それが、ちびりちびりのヴェン・ブランでなおさらにいい気持にあおられていては堪らない。へたな歌もできよう。呑気なことも考えていられよう。
が、これは出るとすぐ、仲間の新聞で知ったのだが、その頃この牢やでこんな呑気をしていては、知らんこととは言いながらはなはだ相済まなかったのだ。
僕がまだフランスに来る途中の船にいた頃、共産党の首領カシエン以下十数名のものが、ルール問題の勃発とともに拘禁された。