Classici giapponesi con furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Leggi 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 86.787 caratteri · 177 schermate
母は眼の縁(ふち)を少し赤くして帰って来ると、
「まだ眠てやないの。」と微笑っていった。子は黙って母の手を引張って叩(たた)いた。
「さアもう寝な。また明日学校が遅れるえ。」
子は口を尖(と)がらせて母の手の指を咬(か)んだ。母は「痛ッ」といって手を引っこめた、そして些(ちょ)っと指頭(ゆびさき)を眺めてから「まアこの子ったら。」といった。子は黙って母を睥(にら)んでいた。そして、「お母さんの阿呆(あほ)。」というと母の手を掴んでもう一度咬もうとした。母は子の背中を押すようにして「此処(ここ)をかたづけたら直ぐ寝るでなお前は前(さき)へ寝てなえ、ほんとにお前は賢いえ。」そういうと子を寝床の方へ連れて行った。
二
その日は刺繍(ししゅう)の先生の市(まち)から村へ廻って来るのが遅れていた。
米の母は、六年前にアメリカヘ行った良人(おっと)から病気という報(しら)せを受けとって以来半年余り送金が絶えているにもかかわらず、まだ刺繍を習っているということについて、親戚側からとやかくいわれた。しかし彼女は、少々の金を費(ついや)してもこれさえ覚えておけばまさかの時に役立つといって習い続けた。