Classici giapponesi con furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Leggi 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 86.787 caratteri · 177 schermate
彼は小猫を下げるように百合の花束をさげたまま、うろうろ廊下を廻って空虚の看護婦部屋を覗いてみた。壁に挾まれた柩のような部屋の中にはしどけた帯や野蛮なかもじが蒸された空気の中に転げていた。まもなくここで、疲れた身体を横たえるであろう看護婦たちに、彼は山野の清烈な幻想を振り撒いてやるために、そっと百合の花束を匂い袋のように沈めておいて戻って来た。
九
山の上では、また或る日拗く麦藁を焚き始めた。彼は暇をみて病室を出るとその火元の畠の方へいってみた。すると、青草の中で、鎌を研いでいた若者が彼を仰いだ。
「その火は、いつまで焚くんです?」と彼は訊いた。
「これだけだ。」と若者はいいながら火のついた麦藁を鎌で示した。
「その火は焚かなくちゃ、いけないものですか。」
若者は黙って一握りの青草に刃をあてた。
「僕の家内は、この煙りのために、殺されるんです。焚かないですませるものなら、やめてくれ給え。」
彼は若者の答えを待たずに、裏山から漁場の方へ降りていった。扁平な漁場では、銅色の壮烈な太股が、林のように並んでいた。彼らは折からの鰹が着くと飛沫を上げて海の中へ馳け込んだ。