Classici giapponesi con furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Leggi 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 86.787 caratteri · 177 schermate
十
訶和郎は剣を抜いて飛び出ようとした。
「待て、兄よ。」と香取はいって、訶和郎の腕を後へ引いた。
先達の松明は簀垣の前へ来かかった。美女の片頬は、松明の光りを受けて病める鶴のように長羅の胸の上に垂れていた。
訶和郎は剣を握ったまま長羅の顔から美女の顔へ眼を流した。すると、憤怒に燃えていた彼の顔は、次第に火を見る嬰児の顔のように弛んで来て口を解いた。そうして、彼の厚い二つの唇は、兵士たちの最後の者が、跛足を引いて朱実を食べながら、宮殿の方へ去って行っても開いていた。しかし、間もなく、兵士たちの松明が、宮殿の草野の上で円く火の小山を築きながら燃え上ると、訶和郎の唇は引きしまり、再び彼の両手は剣を持った。
「待て、兄よ。」
物に怯えたように、香取の体は軽く揺れた。しかし、訶和郎の姿は闇の中を夜蜘蛛のように宮殿の方へ馳け出した。
「ああ、兄よ。」と香取はいうと、彼女の悲歎の額は重く数本の忍竹へ傾きかかり、そうして、再び地の上へ崩れ伏した。
十
訶和郎は兵士たちの間を脱けると、宮殿の母屋の中へ這入っていった。そうして、広間の裏へ廻って尾花で編んだ玉簾の隙間から中を覗いた。