Classici giapponesi con furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Leggi 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 86.787 caratteri · 177 schermate
それと同時に、かの芒の中から押し返した敵の一団は、投げ槍を霜のように輝かせて動乱する奴軍の中へ突入した。忽ち、動揺めく人波の点々が、倒れ、跳ね、躍り、渦巻くそれらの頭上で無数の白い閃光が明滅した。と、やがて、その殺戮し合う人の団塊は叫喚しながら紅となって、延び、縮み、揺れ合いつつ次第に小さく擦り減って行くと、遽に長羅の動かぬ一団の方へ潮のように崩れて来た。それに和して、今まで彼と対峙して止どまっていた耶馬台の左翼の軍勢も、一時に鯨波の声を張り上げて彼の方へ押し寄せた。長羅の一団は彼を捨てて崩れて来た。長羅は一人馬上に踏みとまって、「返せ、返せ。」と叫び続けた。
その時、放してあった一人の奴国の斥候が彼の傍へ馳け寄って来ると、手を喇叭のように口にあてて彼に叫んだ。
「不弥の女を我は見た。見よ、不弥の女は赤い衣を纏っている。」
長羅は彼の指差す方を振り向いた。そこには、肉迫して来る刃の潮の後方に、紅の一点が静々と赤い帆のように彼の方へ進んでいた。長羅はひらりと馬首を敵軍の方へ振り向けた。馬の腹をひと蹴り蹴った。と、彼は無言のままその紅の一点を目がけて、押し寄せる敵軍の中へただ一騎驀進した。