Classici giapponesi con furigana
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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
Leggi 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) di 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 158.045 caratteri · 322 schermate
老爺さんが洋科のお医者が出来るのも初耳だった。あたしの家は頑固で、漢法医にばかりかかって練薬だの、振りだしだのを飲ませ、外傷には貝殻へ入れた膏薬をつけさせていたから――洋科の医者といえばハイカラなものと思っていたあたしは、石炭酸の匂いに厳粛になり、この汚ない老爺さんに呆然としていた。
そのまた老爺さんの言語がふるっている。
「長谷川氏は元気かな。」
長谷川氏――あたしの父で、彼の婿である。常磐津の師匠の格子戸へ犬の糞をぬった不良若衆で、当時でのモダン代言人である。――あたしは、彼のデコボコ頭の凹みにたまった埃をながめた。
以下、その老爺さんの生活の断片で、アンポンタンの眼に映ったヒルムの屑である。
すべてのことに転々とする人を見るとさびしい焦燥を他人ごとながら感じて、石が汗をかくようなにじみだす涙がこみあげてくる時がある。生れながらの性もあろうが、ピッタリと、ものに廻りあわぬ悲しい人たちなのである。蚕でさえ心にあうところのあるまで、繭をかける場処を選んで、与えられた木の枝の、果からはしまで歩き廻る――それは何やら満されない本能の求めなのではなかろうか――老爺さん湯川氏も、自分の本質を空しくして、ただ長く生きた九十年の生涯である。