Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しゅんせつ

春雪

久生 十蘭

Leggi 春雪 (しゅんせつ) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.672 caratteri · 23 schermate

Aozora Bunko

当座は、沈んだ顔をしていたが、そのうちに、二人の娘を学校へ出してやることから、ベッドに入れる世話まで、かいがいしくやるようになった。若いアメリカ人のことは、忘れてしまったのか、調子はずれな声で、鼻歌をうたったりする。それでも、もしやという懸念から、だしぬけに家へ電話をかけて、不意打ちを食わせたが、いちども留守だったことはなく、夕方、玄関へ出迎えるのは、いつも柚子で、そのうちに、そういう用心も馬鹿らしくなって、ついつい、やめてしまった。

それからしばらくして、女中の口から、柚子が、毎朝、八時ごろに家を出て、夕方、五時ごろ帰ってくるという事情が洩れた。柚子からは、そんなことは一度も聞いていないので、不審をおこして、たずねてみた。

「毎日、どこかへ出て行くそうだが、どんな用があるんだね」

「市川と与野へ、一日がわりに買出しに行っているのよ。そうでもしなければ、とてもやっていけないんですから」

足りないながら、さほど逼迫もしない毎日の食餌のことを考えあわせれば、そういう陰の働きがあったればこそと、思いあたるわけだったが、女中の口の足りなさもさることながら、自分からは、ひとこともいわずにすませておく、柚子の気丈さに、感心するよりも呆れた。