Classici giapponesi con furigana
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はる
春
岡本 かの子
Leggi 春 (はる) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 23.864 caratteri · 48 schermate
庭の処々に青塗りのベンチが置いてあって、日光浴や散歩に疲れた患者達が黙って腰かけて居る。調子はずれの軍歌を唄って居る男よりほか、口を動かして居るものは一人も無い。檻のなかの患者の狂暴性とは反対に、あまりおとなし過ぎる静的な患者達なのであろう。
一人の老人が、自分の古羽織を、脱いだり、着たり畳んだりしては、芝生の上にかしこまり、一方の空を仰いでお辞儀をして居る。
――あれは若いうち、誰かの着物を盗んだそうです。気が小さくってそれが苦になり気違いになったんだそうです。
加奈子に訊かれて、傍の男はまた説明した。糸屑をしこたま膝に置いて、それを繋いでばかり居る女、遠くに一人兎の形を真似て両手で耳を高く立て、一つ場所にうずくまって居る男。
加奈子はじき近くのベンチに眼を戻すと、其処に若い男の二人連れを発見した。顔も恰好もよく似た二人連れだ。一人は稍々年長で正気の健康者なのはよく判るが、年下の方は、一眼みただけでも直ぐ気違いと判る。
――あれは兄弟なんですよ。
また加奈子の傍の男は口を出した。
――鍛冶屋の兄弟だったんですよ。親も妻子も無しで二人稼ぎに稼いで居たんですよ。