Classici giapponesi con furigana
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ますおとし
枡落し
山本 周五郎
Leggi 枡落し (ますおとし) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 33.765 caratteri · 67 schermate
「おれも初めてさ、話には聞いていたけれどな」芳造は苦笑いをした、「けれども、ゆっくり二人で話すのには、どこがいいかわからなかったんだ」
「あんたは市村座の芝居へさそってくれたわ、それでおっ母さんが出してくれたんだけれど、芝居小屋ではいけなかったの」
「らしいな」と芳造はあいまいに答えた、「おらあ猿若町はおろか、浅草奥山の掛け小屋芝居さえ覗いたことはないんだから」
おうめは眼を伏せた。祖父が生きていたじぶん、おうめは芝居さえあいていれば、市村座と中村座へはいつも伴れていってもらった。そして、そこで喰べた弁当のうまさは、いまでも忘れることができない。まだごく幼ないころであったし、祖父が亡くなって、父の代になってからは、一度もそんなことはなく、ただ苦労の味しか覚えなかったけれど、幼ない記憶のどこかに、芝居小屋の華やかな、うきうきするような気分は、おぼろげに残っていた。
「あとを聞かせて」とおうめが云った、「それからどうしたの」
芳造はちょっと考えた。どこまで話したか、すぐには思いだせなかったのだ。
「ああ」とやがて彼は云った、「おやじが死んだところまでだっけ、おやじはのたれ死に同様に死んだ、すると、その葬式を済ませるなり、おふくろはおれに、しじみをとって売りにゆけと云いだした」