Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
戦野の陣地で彼が見たものは、人間というものの露骨な形であった。杖をついてサンホセ盆地への道を進み悩みながら、自分の為にだけ生きようと宇治がしみじみ決心したのも、彼が見聞きした現実がはっきりそれを教えたからであった。人間は、自分の利益とか快楽にしか奉仕しないということ、犠牲とか献身とかいうことは、その苦痛を補って余りある自己満足があって始めて成立し得ること。それらのことを彼は此の三年間に深く胸に刻み込んでいた。彼の僚友、今生き残っているのも死んでしまったのも合せて、実に雑多な型の人間がいた。アパリでダンスと酒に酔い痴れた副官もあったし、また花田のように女を連れて逃亡したのもいる。その反面には進んで斬込隊を志願して帰らぬ若い少尉も居たし、部下を救うために己が身を殺した老大尉もいた。しかし此のような戦場の美談を彼は純粋な気持で受け入れることは何となく出来なかった。何か心にひっかかるものがあった。そうした人間の美しさを素直に受け入れないならば、戦野に於ける破倫を彼は憎むわけには行かない筈であった。実際彼には、両方とも此んな危急の状況にあってはむなしい営みに見えた。