Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
逆光線のために看護婦の白衣が透けて、体の形が見えた。女体の輪郭が黒く浮き上っている。それが突然五郎の情感をこすり上げる。眺めるのに絶好の位置だったし、女が体躯を動かすにつれて、肉や皮膚のすれ合いが、自分自身の感触のようになまなましく感じられた。そういう情の動きは、この一年ほどの間、全然五郎にはなかった。
〈これだな。医者が言ってたのは〉
抑圧がとれると、押えたものが露出して来る。入院して日が浅いから、どの看護婦か判らない。五郎は気持を押えようとした。医者の予言した通りに、あるいは薬の言うままになってたまるか! 入院の時から、五郎は心の片隅で決心していたのだ。
〈おれはそこらの人間とは違う。ふつうの人間と同じ反応は示してやらないぞ!〉
五郎は力んでいた。無用の力みで入院して来た。やがて気持をもて余しながらも、ねじ伏せるようにして、そろそろと梯子段を降りた。部屋に戻ると、古い週刊誌を読んでいた中年の付添婦が、五郎の顔を見て言った。
「どうしたんです。眼がへんですよ」
「今朝からものが二重に見えるんだ」
五郎はベッドにもぐり込みながら答えた。
「お薬のせいですよ」