Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
声が一寸途切れた。
「一昨年もそうでした。その前の年も。いつも悲しい辛いことがあって、絶望していると、あの蝉が鳴き出すのです。あの鳴き声は、いやですねえ。何だか人間の声のようじゃないですか。へんに意味ありげに節をつけて、あれは蝉じゃないですよ。今年も、どのような瞬間にあの虫が鳴き出すかと思うと、いやな予感がしますよ」
暫く黙っていた。私が聞いた。
「で、見張には?」
「秋になって、見張の講習に行ったのです。いろいろつらいこともあったのですよ」
「年取っていると、猶のことそうだろうね」
「年齢のせいだけでもありませんよ」
「判らない奴が多いからな」
男は黙っていた。
「志願兵。志願兵上りの下士官や兵曹長。こいつらがてんで同情がないから」
男はうなずいた。そして、低い、沈欝な調子で言った。
「私は海軍に入って初めて、情緒というものを持たない人間を見つけて、ほんとに驚きましたよ。情緒、というものを持たない。彼等は、自分では人間だと思っている。人間ではないですね。何か、人間が内部に持っていなくてはならないもの、それが海軍生活をしているうち、すっかり退化してしまって、蟻かなにか、そんな意志もない情緒もない動物みたいになっているのですよ」