Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
「なぜ? 景色もいいし、水もきれいで泳げるのに」
「やぶ蚊が夜出て来て、チクチク刺すのよ」
「ああ。やぶ蚊か。おれたちもずいぶん刺された」
「おれたちって?」
「うん。暗くなるとあそこに行って、アルコールを水で割ってこっそり飲んだんだ。仲間三人だったけれど、福が一番強かった」
「福って、人の名?」
「そう。奄美大島出身の兵長でね。器用な男だった。芭蕉の葉で芭蕉扇をつくって呉れた。それでばたばたあおぎながら、アルコールを飲んだ。皆若かったね。あの頃は」
五郎は酒瓶を直接口に持って行って、残りを飲み干し、崖下に瓶を放り投げた。
「死んだ水兵というのは、福のことだよ」
「そうなの」
女もコップ酒を飲み干した。
「どうしてその人が溺れたの?」
「うん。アルコールを飲んだ揚句――」
五郎は指差した。
「あの双剣石まで、泳ごうとしたんだ」
「双剣石まで?」
わずかな明るさを背にして、双剣石はくろぐろとそびえ立っていた。それは墓標の形に似ていた。鴉声は静まり、波の音だけがかすかに聞えて来る。
泳ごうと言い出したのは、福であった。どんなきっかけだか、五郎は覚えていない。泳ぎの話になった。