Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate

Aozora Bunko

そんな考えが浮んで来た。正常と異常は、紙一重の差に過ぎないだろう。しかしその差を乗り越える時、性格や感情ががらりと変ってしまう。おれにとって、それがこわかったのではないのか。それで東京を出て、数百里もある薩摩半島につっ走り、今ひっそりかんと五右衛門風呂に沈んでいる。

鉄の壁につけた背中が、やがて耐えがたく熱くなって来た。背を引き剥がして立ち上り、流し場に出る。やはり貧血を起したらしく、眼がくらくらとする。しゃがんでじっとしていた。やがて浴衣をつけ、部屋に戻る。部屋は二階であった。階段の登り口で、主人がどこからともなく出て来て、声をかけた。

「夕食はどげんしもすか」

「ええ」

五郎は考えて答えた。

「軽いものを。酒もすこし」

部屋に上る。へんな感じの部屋だ。天井は低く、舟底型だ。下着を海に面した手すりに乾し、部屋の真中に坐る。どうも感じがへんだ。宿屋の造りではない。第一がらんとし過ぎる。他に泊り客もないようだし、いるのは老人夫妻だけのようだ。真中にちゃぶ台があり、ダチュラの花が瓶にさしてある。ちょっと棺桶みたいな感じの部屋だ。それが五郎の居心地を悪くさせていた。