Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
手に宿帳を持っている。
「どうぞ、ここに――」
女中は言った。
「指圧はすぐ来ますばい」
偽名を書こうかと迷う。次の瞬間、彼は三田村のことを思い出した。本名でないと、返事が届かない。彼は本名を記入した。元の姿勢に戻る。
「ズクラ」
と発音してみた。あれはへんな魚だ。よその海で泳いでいると、ボラなのだが、吹上浜に来ると、ズクラになる。実に平気でズクラになる。
戻り道に買った洋酒のポケット瓶の栓をあけた。いきなり口に含む。ポケット瓶を持ち歩くのは、あの映画セールスマンの真似だ。真似だと気付いたのは、買ってからしばらく後である。彼はすこしいやな気がした。病院にそんな患者が一人いた。相手の動作や言葉を、すぐに真似するのだ。たしかあれはエコーラリイ(反射症状)だと看護婦が教えて呉れた。
〈しかしおれは、反射的に真似するんじゃなく、時間を隔てているからな〉
そう思っても、真似をしたことは、事実であった。五郎は落着かない表情で、もう一口あおった。栓をして残りは床の間に立てかける。胃がじんと熱くなる。
やがて指圧師がやって来た。若くて体格のいい女だ。彼はほっとした。昨夜のように陰々滅々なあんまでは、かなわない。