Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
その暗がりの中から突然小さな女中がちょこちょこと足音を立てずに出て来たので、私はどきっとした。女中の顔がいつもと違っている。故意に表情を殺したような物々しい顔付をして玄関にうずくまって私を見上げた。
「天願さんは居るか」
「天願さんで御座居ますか」
と私の様子をうかがうように眼をすばしこく動かして、突然息を引くようにして言った。
「はあ、いらっしゃいます」
私はむっとしながら靴を脱いだ。此の下宿には天願氏を屡々訪ねて来るので、此の女中は私をよく知って居る筈なのである。それが何かたくらみがあるかのように妙によそよそしいのが気に食わなくて、廊下をどんどん歩き出したら、後ろの方で女中が猫のような声を出した。
「廊下を静かに歩いて下さいませ」
ぎょっとして私が振り返ったら、その小さな女中がきらきら光る眼で私をちらと眺めてそこらの薄暗がりに消えてしまった。
廊下を曲りながら、どうも背筋のあたりがうす寒かった。油を塗って鈍く光る廊下を天願氏の部屋の前まで行ったら、電灯がぱっと点いた。それと同時に私は、襖をあけた。
机に倚りかかっていたらしい天願氏が、明かにびっくりしたらしく、がさごそと身ずまいを整えたのが、只事でないという印象をあたえた。