Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
(あの窓から覗いて見たときの花田中尉の顔だ)
宇治は何故ともなく身ぶるいしながらその想像を断ち切った。暫くして隊長は、苦しそうに呻くような声で訊ねた。
「――で、女は?」
「女は、一緒に居りました」
裸火の蝋燭が揺れ、影が大きく壁にゆらいだ。そして暫く沈黙があった。夜風が密林の上を渡って行くらしく、葉ずれの音が高まり、そして消えて行った。宇治の心の底にかねてから漠然とわだかまるある想念が、此の時初めてひとつのはっきりした形を取りはじめたのである。彼は頬をややこわばらせ、それでも何気ない風を装いながら、無意味な視線を隊長と高城伍長の上にかたみに移していた。
しっとり濡れた長靴の先に黄色い花弁を二三枚貼りつけたまま、宇治は自分の仮小屋の階段を登った。此処は林相の関係で籾搗きの歌声はほとんど聞えない。部屋に入ると床を鳴らしながら彼は壁にかけた拳銃を手におろした。黒色のずっしり持ち重りのするブロオニングである。寝台のへりに腰をかけ、彼は背を曲げて仔細に点検し始めた。点検し終るとひとつひとつ丁寧に弾丸をこめた。布片を出して銃身から銃把を何度も拭いた。うつむいたままその操作をくり返しながら彼は低い声を出してわらい始めた。