Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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えのきものがたり

榎物語

山本 周五郎

Leggi 榎物語 (えのきものがたり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 33.519 caratteri · 67 schermate

Aozora Bunko

さわは明けがたか黄昏の、人に気づかれない時刻を選んでそこへいった。国吉は五日めの夕方に気がついた。隠れている雑木林を少し下へおりて、松の木のところに立つと、河見家の庭の東南、榎のまわりを見おろすことができる。彼はそこからさわの姿を認めた。並んでいる土蔵のうしろをまわり、紫と鼠色を混ぜて流したような、黄昏の靄の中を忍び足で、さわは榎の陰へ近よるのであった。

国吉は用心して、それからなお三日待ち、彼女が早朝と夕方の二度、榎のところへ来ること、監視する者のないことを慥かめた。それからおりていって、さわに逢った。話すことはあまりなかった。二人は初めて抱きあった。ひどく不手際な、おずおずした抱きかたであり、二人とも涙をこぼした。

「私はぬすっとより悪いやつだと云われました」国吉はさわをはなして云った、「私はそんな人間じゃありません、これから私はそんな人間じゃないことを証拠だててみせる、私は江戸へゆきます」

「あたしをいっしょに伴れていって」

「だめです、私たちはすぐに捉まってしまいます、いっしょにゆけたらいいのだが、街道は一つしかないし、河見家の声がかかれば半日と経たないまに道を塞がれます」