Classici giapponesi con furigana
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えのきものがたり
榎物語
山本 周五郎
Leggi 榎物語 (えのきものがたり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 33.519 caratteri · 67 schermate
五
そうなれば、あなたは伴れ戻されるし、自分は殺されるようなめにあうかもしれない。それはこの榎の幹をこの手で撫でるよりも慥かなことだ。
「私は江戸へいって男になります」と彼は熱心に続けた、「河見家の表門から、いばってはいれるような人間になって、そして、あなたを迎えに来ます」
さわは声をころして泣いた。
「私は機転のきかないぐずなやつだったかもしれない」と国吉はさらに云った、「そうだとしても一生そのままでいるとは限らない、人間は変ることがあるし、ぬすっとより悪いと云われた私は、もうこれまでの私ではありません、石にかじりついても出世してみせます、どうか私を信じて下さい」
さわは「信じる」と云った。
「待っていてくれますか」
「ええ、五年でも十年でも」さわは自信なげに答えて云った、「たとえ一生涯でも、あたしは国さんを待っています」
五
さわは国吉を待った。口で誓ったときは確信がなかったけれど、日の経つにつれて決心が固まっていった。両親もきょうだいも、周囲の人たちみんなが、またさわのことは無関心になった。かれらはもともとそうだったのだ。さわが仕合せか不仕合せか、としが幾つになるか、いまどこでなにをしているか、将来どうなるのか、なに一つ気にしたためしはない。