Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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えのきものがたり

榎物語

山本 周五郎

Leggi 榎物語 (えのきものがたり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 33.519 caratteri · 67 schermate

Aozora Bunko

しかもそれは単に「呼びかける声」ではなく、深い血のつながりからほとばしり出るもの、心から心へとじかに通ずるひびきを含むものであった。

「とうさん」とさわは絶叫した、「あたしここにいます、かあさん」

さわは榎の幹からはなれて、父母の声のしたほうへ走りだした。けれども、父母に呼びかけながら走りだすとすぐ、闇の中からとびだして来た誰かに、抱きとめられた。さわはその腕からのがれようとしてもがいた。

「おさわさんだめだ」と抱きとめた男がどなった、「屋敷は潰された、逃げるんだ」

「放して」さわは狂気のように暴れた、「とうさんが呼んでるのよ、かあさんのところへゆくのよ、放して」

「だめだ、もうみんな助かりゃあしない」男はさわを抱きあげた、「逃げないとあんたも死んじまうぞ」

男は暴れるさわを抱いたまま、家とは反対のほうへ走りだした。風雨の咆哮をうち消すように、ぶきみな地鳴りが起こり、非常な圧力をもった黒い山のようなものが、二人のうしろへ轟々と押し寄せた。それはいまにも二人に追いつき、ひっ掴んで呑み込もうとするように感じられた。

――さわ、どこにいる、さわちゃん、こっちへおいで。