Classici giapponesi con furigana
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えのきものがたり
榎物語
山本 周五郎
Leggi 榎物語 (えのきものがたり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 33.519 caratteri · 67 schermate
八
これらのことはごく短い時間の出来事で、おそらく呼吸五つか六つのあいだであったろう。突然、さわの足をなにかが掴み、泥と水の中へ彼女を引き込んだ。
――さわちゃん、どこにいるの。
母の呼び声が聞えたように思い、そのまま、さわはなにもかもわからなくなった。
八
「あなたも顔ぐらい見ている筈よ、名はおすげ、年はたしか二十三だったわ」と柏屋の女中のはつが云った、「中肉中背で、太ってもいないし痩せてもいないし、不縹緻というほどでもなく縹緻よしでもなく、およそいろ恋とは縁のないような、ごくありふれた人柄なのよ」
「あたしのことを云われているようね」と云ってさわは頬笑んだ。
「ばか仰しゃい」とはつはにらんだ、「あなたのきれいなことはこの宿の者ばかりじゃなく、旅の人たちのあいだでさえ評判じゃありませんか」
「あたしでも鏡は見るのよ」
「越重の若旦那をふってるのはそのためじゃないでしょうね、まさか」とはつはちょっとひらき直るように云った、「そうだとしたらあなた罪よ、おさわさん」
「いまの続きを聞かせて」
「話をそらすのがうまいわね、いつもそうだわ」とはつは云った、「もう三年もつきあっているのに、あなたがどこの生れだか、どんな身の上でなんのためにこんなところで稼いでるのか、あなたはなに一つ云おうとしなかった、その話になるときまって、するっと