Classici giapponesi con furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Leggi 次郎物語 (じろうものがたり) di 下村 湖人 (しもむらこじん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 200.443 caratteri · 398 schermate
二人が広間にはいって来た時には、朝倉夫人は、もう食卓のそばにすわっていた。
「今日はどんぶりのご飯でがまんしていただきますわ。でも、中身はいつもよりごちそうのつもりですの。」
「そうか。」
と、朝倉先生は、どんぶりのふたをとりながら、
「よう、鰻どんぶりじゃないか。えらく奮発したね。」
「三人だけでご飯をいただくの、当分はこれでおしまいでしょう。ですから――」
「なあんだ、そんな意味か。そうだとすると、せっかくのごちそうだが、少々気がつまるね。」
「どうしてですの。」
「女にとっては、やはり小さな家庭の空気だけが、ほんとうの魅力らしい。そうではないかな。」
「あら、あたし、つい女の地金を出してしまいましたかしら。自分では、もうそれほどではないと思っていますけれど。」
「ふ、ふ、ふ。私もそれほど深い意味でいったわけでもないんだ。」
朝倉先生はそう言って笑ったが、すぐ真顔になり、床の間の「平常心」の軸にちょっと眼をやった。そして、箸を動かしながら、しばらく何か考えるようなふうだったが、
「むずかしいもんだね。今度でもう十回目だが、私自身でも、いざ新しく塾生を迎えるとなると、やはりちょっと悲壮な気持ちになるよ。