Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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すいごういぶん

水郷異聞

田中 貢太郎

Leggi 水郷異聞 (すいごういぶん) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.516 caratteri · 36 schermate

Aozora Bunko

「そうです、私が山根ですが」

「どうもすみません、私はさっき手紙をさしあげて、ごむりを願った者でございます」

「あなたですか」

「はい、どうも御迷惑をかけてあいすみませんが、今日、先生の御講演を伺いまして、どうしても先生にじきじきお眼にかかりたくてかかりたくて、しかたがないものですから、先生のお宿を聞きあわして、お手紙をさしあげました、まことにあいすみませんが、ちょっとの間でよろしゅうございます、私の宅までお出ましを願いとうございます」

「どちらですか」

女はちょっと後をふり返って丘の端へ指をさした。

「あの丘の端を廻った処でございますが、舟で往けば十分もかかりません」

「舟がありますか」

「ええ、ボートを持って来ております」

「あなたがお一人ですか」

「ええ、そうです、お転婆でございましょう」

女は艶やかに笑った。

「そうですね」

省三はちょっと考えた。

「婢と爺やよりほかに、何人も遠慮する者はおりませんから」

「そうですね、すぐ帰れるならまいりましょう」

「すぐお送りします」

「ではまいりましょう」

「それでは、どうかこちらへ」

女が前になってアンペラの俵を積んである傍を通って土手へ出た。