Classici giapponesi con furigana
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すいめんにうかんだおんな
水面に浮んだ女
田中 貢太郎
Leggi 水面に浮んだ女 (すいめんにうかんだおんな) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4721 caratteri · 10 schermate
「怪しいものを仕留めたから、ちょっと来てくれ」
若党は平三郎の後から跟いて来た。平三郎は離屋にあがって確に散ったと思った行燈の血を前にしらべてみた。行燈には血らしい滴りも見えなかった。それでは燗鍋や盃などがあるかと思って行燈の下を見た。燗鍋も盃も皿もなにもなかった。彼は手にしていた脇差を行燈の燈へ翳して見た。刀にはすこし異状がないでもなかった。青いどろどろした汁のようなものが喰ついていた。平三郎はそれを指でしごいてその指を燈に透かして見た。それは青いどろどろしたものであったが、しかし、決して血などではなかった。
「これはなんであろう」
平三郎はその指をもみあわしてまた燈に透かして見た。若党二人は眼をってそれを見ていた。
「たしかに怪しいものを仕留めたから、邸の中を詮議してくれ」
平三郎は刀の異状に力を得て、若党と三人で松明を点けて庭の隅隅を調べて廻った。曇った空に鬼魅悪い冷冷する風が出ていた。庭には何の異状もなかった。
その夜遅くから大雨になって風がそれに添うて来た。雨と風は次第に強くなるばかりであった。高岡町の傍を流れている仁淀川は、忽ち汎濫して両岸の堤防が危険になって来た。