Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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えいじつしょうひん

永日小品

夏目 漱石

Leggi 永日小品 (えいじつしょうひん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 50.000 caratteri · 100 schermate

Aozora Bunko

その時自分は主婦によってK君に紹介された。二人の日本人が倫敦の山の手の、とある小さな家に偶然落ち合って、しかも、まだ互に名乗り換した事がないので、身分も、素性も、経歴も分らない外国婦人の力を藉りて、どうか何分と頭を下げたのは、考えると今もって妙な気がする。その時この老令嬢は黒い服を着ていた。骨張って膏の脱けたような手を前へ出して、Kさん、これがNさんと云ったが、全く云い切らない先に、また一本の手を相手の方へ寄せて、Nさん、これがKさんと、公平に双方を等分に引き合せた。

自分は老令嬢の態度が、いかにも、厳で、一種重要の気に充ちた形式を具えているのに、尠からず驚かされた。K君は自分の向に立って、奇麗な二重瞼の尻に皺を寄せながら、微笑を洩らしていた。自分は笑うと云わんよりはむしろ矛盾の淋しみを感じた。幽霊の媒妁で、結婚の儀式を行ったら、こんな心持ではあるまいかと、立ちながら考えた。すべてこの老令嬢の黒い影の動く所は、生気を失って、たちまち古蹟に変化するように思われる。誤ってその肉に触れれば、触れた人の血が、そこだけ冷たくなるとしか想像できない。自分は戸の外に消えてゆく女の足音に半ば頭を回らした。