Classici giapponesi con furigana
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えいじつしょうひん
永日小品
Leggi 永日小品 (えいじつしょうひん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 50.000 caratteri · 100 schermate
世の中が二間四方に縮まったかと思うと、歩けば歩るくほど新しい二間四方が露われる。その代り今通って来た過去の世界は通るに任せて消えて行く。
四つ角でバスを待ち合せていると、鼠色の空気が切り抜かれて急に眼の前へ馬の首が出た。それだのにバスの屋根にいる人は、まだ霧を出切らずにいる。こっちから霧を冒して、飛乗って下を見ると、馬の首はもう薄ぼんやりしている。バスが行き逢うときは、行き逢った時だけ奇麗だなと思う。思う間もなく色のあるものは、濁った空の中に消えてしまう。漠々として無色の裡に包まれて行った。ウェストミンスター橋を通るとき、白いものが一二度眼を掠めて翻がえった。眸を凝らして、その行方を見つめていると、封じ込められた大気の裡に、鴎が夢のように微かに飛んでいた。その時頭の上でビッグベンが厳に十時を打ち出した。仰ぐと空の中でただ音だけがする。
ヴィクトリヤで用を足して、テート画館の傍を河沿にバタシーまで来ると、今まで鼠色に見えた世界が、突然と四方からばったり暮れた。泥炭を溶いて濃く、身の周囲に流したように、黒い色に染められた重たい霧が、目と口と鼻とに逼って来た。