Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ぬまふじん

沼夫人

泉 鏡花

Leggi 沼夫人 (ぬまふじん) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 39.541 caratteri · 78 schermate

Aozora Bunko

二十二

」

二十二

その時医師は肩を昂げて、

「雨かな。」

と仰向けになったが、また、俯向いて胸を払った。

「何だ、廊下は水だらけだ。」

細君は何にも言わぬ。小松原も居窘まって、忙しく息をするばかり。

鶏が鳴いたので、やっと細君が顔を上げたが、廊下に突立った夫を見た時、聞耳を立てて、

「何です……がたがた、がたがた言って、」

小松原が、

「あ、」

「あれか、」

と医師もそこで聞取った。

「酒田……先刻のも、」

「むむ、診察処だ。」

「あれえ。」

「開けて見ると何にも居ないのだ。が、待てよ。」

と言って、蚊帳の周囲をぐるりと半分、床の間をがたりと遣ると、何か提げた、その一腰、片手に洋燈を翳したので、黒塗の鞘が、袖をせめて、つらりと光った。

「危い、貴郎、」

「大丈夫だ。」

「いいえ、」

細君は一声、誰かを呼んで、

「玄関の方を起して下さい、正吉――」

もう医師の姿はなかった。

ばたん、と扉の開いた音。

二人が揃って、蚊帳の中を廊下際で、並んで雨宿りをする姿で立った処へ、今度は静に悠々と取って返す。

「どうした。」

「鼈だ。」

「え。」

「鼈が三個よ。」

「どこに、ですえ。」

と細君は歯の音も合わぬ。