Classici giapponesi con furigana
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ぬまふじん
沼夫人
泉 鏡花
Leggi 沼夫人 (ぬまふじん) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 39.541 caratteri · 78 schermate
五
ごほんと、乾咳を咳いて、掻巻の襟を引張ると、暗がりの中に、その袖が一波打って煽るに連れて、白い蔽に、襞が入って、何だか、呼吸をするように、ぶるぶると動き出す。
目を塞いでも、こんな時は詮がないから、一層また起直って、確と、その実は蔽が見えるのでもなく、勿論揺れるのでもない、臆病眼が震えるのを、見定めようと思ったが、頭が重いのに、瞼がだるく、耳が鳴る。手足もぐったりで、その元気が出ぬ。
ままよ、寝っちまえ! ぐッと引被ると、開いたのか、塞いだのか、分別が着かぬほど、見えるものはやっぱり見えて、おまけに、その白いものが、段々拡がって、前へ出て、押立って、まざまざと屏風を立てたように寄って来る。
五
さあ、その、ふわふわと縦に動く白いものが、次第低に、耐力なく根を抜いて、すっと掻巻の上へ倒れたらしい心地がすると、ひしひしと重量が掛って、うむ、と圧された同然に、息苦しくなったので、急いで、刎退けに懸ると、胸に抱合わせている手が直ぐに解けず、緊着けられているような。
腕を引っこ抜く勢で、いて、掻巻をぱっと剥ぐ、と戸棚の蔽は、旧の処にぼうと下って、何事も別条はない。