Classici giapponesi con furigana
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なきむしこぞう
泣虫小僧
林 芙美子
Leggi 泣虫小僧 (なきむしこぞう) di 林 芙美子 (はやしふみこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 34.906 caratteri · 70 schermate
有楽町で降りて、銀座裏の雑誌社まで歩くと、啓吉のズックの運動靴は、水でびたびたして来た。赤や緑の服を着た珍しい女達が通っている。
「大きな町だろう?」
「…………」
雑誌社の前へ来ると、勘三は啓吉に雨傘を高くかかげさして、身じまいをなおすと、一つの原稿を封筒へ入れて、
「じゃ傘さして待ってな、あっちこっち行くンじゃないよ、すぐ出て来るから……」
馬に乗ったような意気込みで、扉を開けて這入って行ったが、勘三がビルディングの中へ消えてしまうと、啓吉は寒さと心細さで、何度すすっても鼻水がこぼれた。ここから、母親のそばまではもう帰れない程遠いのではないかと思った。舗道の三和土へ当る雨が、弾ねあがって、啓吉の裾へ当って来る。傘が大きいので、啓吉の姿が見えない程低く見えた。
街には昼間から灯がついていて、人力車が一台ゆるゆる走っていた。ラジオが聴える。がちゃがちゃした音楽だった。
「まだかな」
啓吉は悄気て大きな傘をブランブラン振った。
「おい啓坊!」
啓吉はほっとして傘を持ちあげてビルディングの玄関にいる勘三のそばへ傘を持って走った。
「ここも大入満員だ」
「どんな人がいるの?」