Classici giapponesi con furigana
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せいひんのしょ
清貧の書
林 芙美子
Leggi 清貧の書 (せいひんのしょ) di 林 芙美子 (はやしふみこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 18.061 caratteri · 36 schermate
と何となく声をたてて唄ってみた。
六
長いこと、人間が住まなかったからであろう、部屋の中は馬糞紙のような、ボコボコした古い匂いがこもっていて、黒い畳の縁には薄く黴の跡があった。
「おい、隣りだけでも蕎麦を持って行っといた方が都合がいいぜ、井戸が一緒らしいよッ」
カツンカツン鴨居に何かぶっつけながら与一は不興気に私に呶鳴った。
私は参拾銭の蕎麦の券を近所の蕎麦屋から一枚買って来ると、左側の一軒目の家へ引越しの挨拶に出向いた。
隣りと云っても、田舎風にポツンポツンと家の間に灌木が続いているので、見たところ一軒家も同然のところである。私は何度も水を潜って垢の噴き出たようなネルの単衣を着て、与一のバンド用の、三尺帯をぐるぐる締めていた。
「何をする人だろう」と考えるに違いない。尋ねた場合は、「絵の先生をしています」とでも濁しておこうと、私は私の家と同然な御出入口と書いてあるその硝子戸を引いた。
この家の主は、よっぽど白い花が好きと見えて、空地と云う空地には、早咲きの除虫菊のようなのが雪のように咲いていた。
家根の上から白い煙があがっている。
花の蔭では、蛙が啼くから帰ろうと歌って、男の子がポツンとひとりで尿をしている。