Classici giapponesi con furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Leggi 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 71.989 caratteri · 144 schermate
六月の末の或る日であった。学校の方に職員会議があって、日の暮れ方に家へ戻って来た貝島は、二三日前から熱を起して伏せって居る細君の枕もとで、しく/\としゃくり上げる子供の声を聞いた。
「あ、また誰かゞ叱られて泣いて居るな」
貝島は閾を跨ぐと同時に、直ぐそう気が付いて神経を痛めた。近頃は家庭の空気が何となくソワソワと落ち着かないで、老母や妻は始終子供に叱言を云って居る。子供の方でも日に一銭の小遣いすら貰えないのが、癇癪の種になって、明け暮れ親を困らせてばかり居る。
「これ、おばあさんがあゝ云っていらっしゃるのに、なぜお前はお答えをしないのです。お前はまさか、いくらお母さんがお銭を上げないからと云って、人の物を盗んで来たのじゃありますまいね」
こう云いながら、ごほん、ごほんと力のない咳をして居る細君の声を聞くと、貝島は思わずぎょっとして急いで病室の襖を明けた。其処には総領の啓太郎が、祖母と母親とに左右から問い詰められて、固くなって控えて居るのであった。
「啓太郎、お前は何を叱られて居るのです。お母さんはあの通り加減が悪くって寝て居るのに、餘計な心配をさせるのではありませんて、此の間もお父様が云って聞かせたじゃないか。