Classici giapponesi con furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Leggi 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 71.989 caratteri · 144 schermate
(一)の三
それでないと、自分は到底立身出世をする事が出来ないぞ!」―――己は屡々斯う云って、自分の心を鞭撻ったが、一向効果がないらしかった。己の精神は、アルコオルや揮発油よりももっと蒸発力の強い気体のようなもので、いくら壜詰めにされても、キルクや封蝋で密閉されても、纔な隙間からどんどん上昇して行くのだった。己は漸く、自分の缺点が、非常に重大な、根底の深いものである事を発見した。
(一)の三
心が、醜い現実よりも美しい幻影の方へ、魂が、生真面目な「冷静」よりも歓喜に充ちた「昂奮」の方へ、常に引き寄せられると云う、己の性癖は、いくら矯めようとしても矯め切れない、先天的の素質であるとしか思えなかった。
「自分は何と云う不運な性分に生れついたのだろう。」―――こう考えて、己は幾度か自分の前途を悲観した。なぜと云うのに、己が池田屋へ奉公に来たのは、商売の道を覚える為めであって、其の当時の己の希望は、云う迄もなく将来偉大なる実業家として立つ事であった。にも拘らず、自分は実業家として成功するのに、最も不適当な、寧ろ最も有害な素質を備えた人間だからである。
「己の此の傾向が、果して先天的の性癖に起因して居るなら、無理やりに其れを矯正しようとするのは、恰も自然の不可抗力に刃向うようなものではなかろうか。