Classici giapponesi con furigana
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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
Leggi 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) di 室生 犀星 (むろうさいせい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 105.794 caratteri · 211 schermate
何と永い間こういう平穏な時が彼らの上に訪れて来なかったことであろう。
この時、水のうえに何やら動くものが皆の眼にはいった。それは一羽のかいつむりが水のなかに潜り入った姿だった。殆、礫を打ったほどにしか見えないかいつむりは、はっきりと何鳥だかの区別さえできかねるほど迥かなものだった。四人の眼はひとしくその迅い鳥に眼をとめた。
「我らあのような小鳥は見たこともござらぬ。」
和泉の人は熱心に見入って、誰にいうともなくいった。
「我らも見たことがありませぬ。」
きらびやかな川の面の日ざしのあいまに浮かび上っては、また、ひとしきり水の中に素早いさざ波を立てて沈む雀ほどの小さい水鳥は、春の温んだ水の面にうかんでいるあいだは、またたきするくらいの迅い一瞬のうちであった。
「あの鳥は何鳥でございましょう。」
橘はかつて見たこともない小さい水鳥を指差していった。
「あれはかいつむりという鳥じゃ、潟にいる鳥じゃがの。」
基経はこういいながらはっと気づいた。この水鳥を二人は射てるであろうか、基経は何気なく二人をちらと見たとき敏感な若者連は基経の眼の中を、津の人も、和泉の人も、いまかその言葉が基経の口を衝いていわれるかを、息を呑んで待ちかまえているふうであった。