Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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おぎふくうた

犀星王朝小品集

室生 犀星

Leggi 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) di 室生 犀星 (むろうさいせい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 105.794 caratteri · 211 schermate

Aozora Bunko

もう、そこは生田川の土手下になっていた。津の人は和泉の人はたすかるまいと思ったが、突然、風が吹いて顔の皮が剥がれるような寒さがすると、ずっと先まで見えた土手の続きが見えなくなってしまった。流血をしらべようと手であたりの地面の上をさぐると沼のようにどろどろだった。自分も死にかけている、和泉の人はもう呼吸がなくなっているだろうと思ったが、生きられるものなら生きて見ようと漸とほのぼのとした希望が生じ出した。まるで考えもつかない不意に湧いた希望だった。生きればどうなると彼は忘れかけたものをおもい当てるように、橘の姫の顔が突然頭の中にうかんだ。だが、もう土手も人も見えなかった。彼は突然、対手がまだ生きているかどうかをもう一度確めるために、出来るだけ大声に叫んだ。

「和泉の猟夫! 相射だぞ。」

だが、実際ではもう声は出ないばかりか、手先さえうごかなかった。頭ばかりがほんの少しの部分だけがはたらいていた。

生田川の岸辺に二人の姿がしだいに遠ざかって行った時分、この狂気した一瞬の出来事は、基経には分りかねる光景であり、あるいは水鳥のいどころを捜しに行ったのではないかと思わせるほど、何が何やら訳の分らぬ一刻の揉み合いであった。