Classici giapponesi con furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Leggi 痴人の愛 (ちじんのあい) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 179.399 caratteri · 353 schermate
と云った調子で、初めのうちは凄いほど落ち着いていました。が、ちょうど母から手紙が届いて二三日過ぎた或る夜のこと、
「ねえ、譲治さん、あたし、洋服が欲しいんだけれど、拵えてくれない?」
と、彼女は突然、甘ったれるような、そのくせ変に冷やかすような、猫撫で声でそう云いました。
「洋服?」
私は暫くあっけに取られて、彼女の顔を穴の開くほど視詰めながら、「ははあ、此奴、為替の来たのが分ったんだな、それで捜りを入れているんだな」と気がつきました。
「ねえ、いいじゃないの、洋服でなけりゃ和服でもいいわ。冬の余所行きを拵えて頂戴」
「僕は当分そんな物は買ってやらんよ」
「どうしてなの?」
「着物は腐るほどあるじゃないか」
「腐るほどあったって、飽きちゃったから又欲しいんだわ」
「そんな贅沢はもう絶対に許さないんだ」
「へえ、じゃ、あのお金は何に使うの?」
とうとう来たな! 私はそう思って空惚けながら、
「お金? 何処にそんなものがあるんだ?」
「譲治さん、あたし、あの本箱の下にあった書留の手紙見たのよ。譲治さんだって人の手紙勝手に見るから、そのくらいな事をあたしがしたっていいだろうと思って、―――」