Classici giapponesi con furigana
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はくもくれん
白木蓮
豊島 与志雄
Leggi 白木蓮 (はくもくれん) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.039 caratteri · 24 schermate
」
喜美子はいつも、明るい顔で、明るい眼眸だ。糸切歯の笑みが消えると、桃代と向き合って、ぴたりと体勢がきまる。
桃代は三味線の調子を合せて、ちょっと間を置く。それから掛声と共に、爪弾きだが、二の絃と三の絃がいっしょに、チャンと響くと、喜美子の美しい声が謡いの調子をこなしてゆく。――稲荷山三つの灯し火明らけく。
そんなことが、私の心にしみるのだ。浅墓な感傷だろうか。私は涙を眼にためながら、なにか堪え難い気持ちで、立ち上って硝子戸を開く。すぐ眼の前に、白木蓮の大きな花が咲いている。もう暮れてしまった夜の闇に、青みを帯びて仄白く、造花のようにも見えるし、何かの化身のようにも見える。冷たい大気に漂ってるその香気が、やさしく私の肌を撫でる。私は何かに憑かれたような心地で佇んだ。
その白木蓮の花が、今、桃代の死体のわきに活けてある。桃代の死体は、柔かい布団の中にすっぽりと埋まって、形体も見分けがつかない。彼女はその体躯ごとにどこかへ脱け出してしまったかのようだ。
ちょっとひっそりとした一刻の合間だった。婆やさんがお茶をいれてくれるだけの時間に、私は告別をすました。