Classici giapponesi con furigana
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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
Leggi 真珠夫人 (しんじゅふじん) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 289.296 caratteri · 578 schermate
彼女が予期した通りの光景が其処にあった。長身の父は威丈高に、無言のまゝ、兄を睨み付けて立っていた。痩せた面長な顔は、白く冷めたく光っている。腰の所へやっている手は、ブル/\顫えている。兄は兄で、昂然とそれに対していた。たゞさえ、蒼白い顔が、激しい興奮のために、血の気を失って、死人のように蒼ざめている。
父と子とは、思想も感情もスッカリ違っていたが、負けぬ気の剛情なところ丈が、お互に似ていた。父子の争いは、それ丈激しかった。
二人の間には、絵具のチューブが、滅茶苦茶に散っていた。父の足下には、三十号の画布が、枠に入ったまゝ、ナイフで横に切られていた。その上に描かれている女の肖像も、無残にも頬の下から胸へかけて、一太刀浴びているのだった。
そうした光景を見た丈で、瑠璃子の胸が一杯になった。父が、此上兄を恥しめないように、兄が大人しく出て呉れるようにと、心私かに祈っていた。
が、父と兄との沈黙は、それは戦いの後の沈黙でなくして、これからもっと怖しい戦いに入る前の沈黙だった。
画布までも、引き裂いた暴君のような父の前に、真面目な芸術家として兄の血は、熱湯のように、沸いたのに違いなかった。