Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しんじゅふじん

真珠夫人

菊池 寛

Leggi 真珠夫人 (しんじゅふじん) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 289.296 caratteri · 578 schermate

Aozora Bunko

つい此間来た、鷲の嘴のような鼻をした男が、今にも玄関に現れて来そうな気がして、瑠璃子は自分の居間に、じっと坐っていることさえ、出来なかった。あの男が、父に直接会って、弁済を求める。父が、素気なく拒絶する。相手が父を侮辱するような言葉を放つ。いら/\し切っている父が激怒する。恐ろしい格闘が起る。父が、秘蔵の貞宗の刀を持ち出して来る。そうした厭な空想が、ひっきりなしに瑠璃子の頭を悩ました。が、午前中は無事だった。一度玄関に訪う声がするので驚いて出て見ると、得体の知れぬ売薬を売り付ける偽癈兵だった。午後になってからも、却々来る様子はなかった。瑠璃子は絶えずいら/\しながら厭な呪わしい来客を待っていた。

父は、朝食事の時に、瑠璃子と顔を合わせたときにも、苦り切ったまゝ一言も云わなかった。昨日よりも色が蒼く、眼が物狂わしいような、不気味な色を帯びていた。瑠璃子もなるべく父の顔を見ないように、俯いたまゝ食事をした。それほど、父の顔は傷しく惨に見えた。昼の食事に顔を合した時にも、親子は言葉らしい言葉は、交さなかった。まして、今日が呪われた六月三十日であると云ったような言葉は、孰らからも、おくびにも出さなかった。