Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しんじゅふじん

真珠夫人

菊池 寛

Leggi 真珠夫人 (しんじゅふじん) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 289.296 caratteri · 578 schermate

Aozora Bunko

四

「茲にいらっしたのですか。妾も、散歩にお伴いたしますわ。母は、帰りそうにもありませんですから。」

彼女は、低い小さい声で、途切れ/\に言った。青年は、駭いて彼女を振り返った。投げた礫が忘れた頃に激しい水音を立てたように、青年は自分の一寸した勧誘が、少女の心を、こんなに動かしていることに、駭いた。が、それは決して不快な駭きではなかった。

「じゃ、お伴しましょうか。」

そう言いながら、青年は歩き初めた。美奈子は二三尺も間隔を置きながら従った。夢のような幸福な感じが、彼女の胸に充ち満ちて、踏む足も地に付かないように思った。

四

初め、連れ立ってから、半町ばかりの間、二人とも一言も、口を利かなかった。初めて、若い男性、しかも心の奥深く想っている若い男性とたゞ二人、歩いている美奈子の心には、散歩をしていると云ったような、のんきな心持は少しもなかった。胸が絶えず、わく/\して、息は抑えても/\弾むのであった。

青年も、黙っていた。たゞ、黙ってグン/\歩いていた。二人は、散歩とは思われないほどの早さで、歩いていた。何処へ行くと云う当もなしに。

早川の谿谷の底遥かに、岩に激している水は、夕闇を透してほのじろく見えていた。