Classici giapponesi con furigana
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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
Leggi 石狩川 (いしかりがわ) di 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 253.535 caratteri · 506 schermate
阿賀妻は吐きだすように一言云った。
「ようこそ」
かすかに彼女は答えた。
「ごめん下さい」
主婦はその傍らに来てぴたりとすわった。慇懃に手をつき、そこの下座から、立ちはだかっている夫に挨拶をした。
「おかえりなさいませ」
「ああ」
彼は袴を取りながら疲れた声でうなずいた。
「こちら――」と妻は語をついだ。身ぶりで玉目トキを示し、彼女のいる理由を説明した、「今宵高倉さまのお通夜に、主人代理としてお顔出しする方がよいものかどうか、と、そうおっしゃって、わざわざおたずね下さったのでございましたが」
彼はだまって炉ばたにくつろいだ。茶を淹れようとする妻に手をふって云った。
「めしだ、めしだ」
「おお、ほほ」と、妻は気づいて、身をひるがえすように立ちあがった。
棚のお膳を取りおろすのだ。蔽った布巾をはらうと、茶碗のなかにはお初ほが、ぱさぱさしたうす黒いサイゴン米ながら、主人のために取りわけられていた。汁を酌ぐ手も馴れたようであった。刳りぬき盆をさしだして茶碗を受ける妻女は、日ごとに新しい境涯に順応し満足しつつあった。女には、おちぶれ果てた、と、別に比べるものも無かった。