Classici giapponesi con furigana
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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
Leggi 石狩川 (いしかりがわ) di 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 253.535 caratteri · 506 schermate
行こう、行こう、とうわずった声で叫んだ。やっとその目的地に立ち向う段取りになったと云うのだ。だが、空翔けて行くことは出来ない。妻と子と、じじとばばと、先祖代々の位牌と――すなわち彼らは、彼らの背中にそれぞれの家を背負って、この脚で歩いて行かなければならぬのであった。一呼吸入れて立ちあがったわけだ。この一呼吸に一年と半年に及ぶながい月日をつぶしてしまった。そして幾人かの伴侶を見うしなった。そういう困憊もこれでおしまいであろう――昨夜はそうも考えた。けれども今、あかるい陽の下で見るこの見とおしも利かない茫洋とした野山はどうしたものであろう。どこを通って行こうというのだ?――いやまず、通るに適う途をひらくのがまッ先の仕事であった。ほそぼそながらそれによって、彼らの探した新たな故郷のトウベツは、港町イシカリに通じ、そうすればそこのイシカリから、海の水は続きにつづいて、代々の親ごたちが眠る生れ故郷にもつながりを持ったと考えられる。
「前々からのお話しに従って――」と大野順平が云った。
彼の二段あごには汗が流れていた。それを手甲で拭きとって、彼はゆるやかな、波紋を描くような声で述べはじめた。