Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(四) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 229.324 caratteri · 458 schermate
「……どれ」
と能登はわざと、耳もかさない容子で地から腰を擡げ出した。
「いずれ朝となく夜となく、自身しげしげ見廻りにまいる。みかど! ほかに何ぞ、頼まれておく御用でもないか」
「ない」
「ありませんかの」と嘲侮をふくめて「もし御用のときは、童僕の金若をお召しなされ。彼方の鈴縄を引けば、すぐ下の木戸から兵どもが登ってまいろう」
「抜かりはないの」
「あって堪ったものではおざらん。甲ノ尾の判官殿はお気弱だが、能登は生れてから涙は知らぬ男でおざる」
いい捨てると、彼はその野性の野臭をほこるかのように、大きな肩幅と尻を帝にむけて、のっそ、のっそ、立ち去った。
後醍醐はおん眼のすみからそれを見やっていた。
が、ふしぎに腹も立って来ないのだった。
むしろ爽快な感すら覚えたようである。野人の無礼は難なく帝の皮をひン剥いて行ったのだ。しかし帝はそのため、かえって素肌な人間と人間とのやりとりというものを教えられたといっていい。一野人を相手どってこんなにも思うざまを吐いてみたことが、自然、五体の汗腺にあとの爽快味を残したものかとおもわれる。
それにせよ、ずいぶん秘すべきことをまで放胆にいってしまわれたが、すでに判官ノ清高には、こうならぬ前に国分寺では、かなりご腹蔵の底を洩らされておられたのだ。