Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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わらうあくま

笑う悪魔

野村 胡堂

Leggi 笑う悪魔 (わらうあくま) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 27.687 caratteri · 55 schermate

Aozora Bunko

続いて若い夫人の由紀子、多勢の客は階子的一パイに溢れて思いも寄らぬ突発事に、眼を見張るばかり。

「医者だ早く」

誰やらが怒鳴ると、書生の一人が、電話室へ飛んで行きます。

「美保子、確りしろ、傷は浅いぞ」

兄に抱き上げられた美保子の瑠璃色のエヴニングの胸は、緋牡丹を叩き付けたように血に染んで居りますが、幸に傷は浅かったらしく、暫くすると漸く物を言える程度に人心地付きました。

「お兄様、怖い」

犇と兄に抱きつく美保子は、もう十九の娘盛りですが、両親に早く別れて、兄を父親のように育って来たのです。

「奈々子は、奈々子は?」

それを差覗く熊谷三郎兵衛は、年甲斐もなくワナワナ顫えて居ります。

「彼方」

美保子は半身を起して、窓の方を指しました。窓は明けっ放したまま、恐らく悪者は、奈々子を連れて其処から逃げ出したというのでしょう。

主人熊谷三郎兵衛を始め二三人の男達は、窓に飛付いて眺めましたが、外は漆の闇で、生憎粉雪がサラサラと降り出した様子、悪者の姿などは何処にも見えません。

その上建物は明治時代の古風な煉瓦で、其処から麗人奈々子を奪い去ったとすれば、飛降りることなどは思いも寄らず、奈々子が承知の上で無ければ、息の根を止めるか気を喪うかしたまま、引っ担いで梯子で降りるか、逞しい縄梯子でも用意しなければならないわけです。