Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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とうじゅうろうのこい

藤十郎の恋・恩讐の彼方に

菊池 寛

Leggi 藤十郎の恋・恩讐の彼方に (とうじゅうろうのこい) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 37.146 caratteri · 74 schermate

Aozora Bunko

の狂言も童たらしのように、曲ものう見えまするわ。前代未聞の密夫の狂言とは、さすがに門左衛門様の御趣向じゃ。それに付けましても、坂田様にはこうした変った恋のお覚えもござりましょうなハハハハ」と、時にとっての座興のように高々と笑った。

今まで、おし黙っていた藤十郎の堅い唇が、綻びたかと思うと、「左様な事、何のあってよいものか」と、苦りきって吐き出すように云った。「藤十郎は、生れながらの色好みじゃが、まだ人の女房と念頃した覚えはござらぬわ」と、冷めたい苦笑を洩しながら付け加えた。若太夫は、座興の積で云った諧謔を、真向から突き飛ばされて、興ざめ顔に黙ってしまった。

傍に坐っていた切波千寿は、一座が白けるのを恐れたのであろう。取做し顔に、微笑を含みながら、

「ほんに、坂田様の云われる通じゃ。この千寿とても、主ある女房と、念ごろした事はないわいな」と、云いながら女のように美しい口を掩うた。

が、藤十郎は、前よりも一際、苦りきったままであった。彼は今心の裡で、僅か三日の後に迫った初日を控えて、芸の苦心に肝胆を砕いていたのである。彼に取って、其処に可なり危険な試金石が横わっている。