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Classici giapponesi con furigana

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とうじゅうろうのこい

藤十郎の恋・恩讐の彼方に

菊池 寛

Leggi 藤十郎の恋・恩讐の彼方に (とうじゅうろうのこい) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 37.146 caratteri · 74 schermate

Aozora Bunko

藤十郎の恋

一

元禄と云う年号が、何時の間にか十余りを重ねたある年の二月の末である。

都では、春の匂いが凡ての物を包んでいた。ついこの間までは、頂上の処だけは、斑に消え残っていた叡山の雪が、春の柔い光の下に解けてしまって、跡には薄紫を帯びた黄色の山肌が、くっきりと大空に浮んでいる。その空の色までが、冬の間に腐ったような灰色を、洗い流して日一日緑に冴えて行った。

鴨の河原には、丸葉柳が芽ぐんでいた。その礫の間には、自然咲の菫や、蓮華が各自の小さい春を領していた。河水は、日増に水量を加えて、軽い藍色の水が、処々の川瀬にせかれて、淙々の響を揚げた。

黒木を売る大原女の暢びやかな声までが春らしい心を唆った。江戸へ下る西国大名の行列が、毎日のように都の街々を過ぎた。彼等は三条の旅宿に二三日の逗留をして、都の春を十分に楽しむと、また大鳥毛の槍を物々しげに振立てて、三条大橋の橋板を、踏み轟かしながら、遙な東路へと下るのであった。

東国から、九州四国から、また越路の端からも、本山参りの善男善女の群が、ぞろぞろと都をさして続いた。そして彼等も春の都の渦巻の中に、幾日かを過すのであった。