Classici giapponesi con furigana
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とうじゅうろうのこい
藤十郎の恋・恩讐の彼方に
菊池 寛
Leggi 藤十郎の恋・恩讐の彼方に (とうじゅうろうのこい) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 37.146 caratteri · 74 schermate
私は、二年近くも、馴染を重ねた染之助の舞台に、別れねばならぬかと思うと、今まで自分の眼の前にあった華やかなまぼろしが、一度に奪い去られるような淋しさを感じました。が、その噂は、時が経つに連れて本当だと云うことが分りました。
私は、お名残だと思ったものですから、その興行は、二日隔き位に足繁く通いました。その時の狂言は、義経千本桜で、染之助はすし屋の場で、弥助――実は平維盛卿になっていました。私は、あの召使に身を窶しながらも、溢れるような品位を持った維盛卿の姿を、どれほど懐しく見守ったことでしょう。私は、維盛卿に恋をするすし屋の娘をどれほど、羨しく思ったでしょう。しかも、私はこの維盛卿が、私の眼に写る染之助の最後の姿だと思うと、更に懐しさが胸に一杯になるのでした。
ところが、この狂言が段々千秋楽に近づく頃でした。染之助の舞台姿に別れる私の悲しさが、段々私の小さい胸に、ひしひしと堪えて来る頃でした。私がある日、すし屋の幕が終ると、支度もそこそこに帰りかけると少しも顔馴染のない役者の男衆らしい男が、私を追っかけて来て、
『染之助親方が、これは御ひいきに預りましたお礼のしるしに、差上げる寸志でございますから、まげてお受納下さいますようと申しておりました』