Classici giapponesi con furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Leggi 虞美人草 (ぐびじんそう) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.559 caratteri · 401 schermate
「ホホホホ兄さんは随分口が達者ね」
「達者なのは口だけか。可哀想に」
「まだ、あるのよ」
宗近君は返事をやめて、欄干の隙間から庭前の植込を頬杖に見下している。
「まだあるのよ。一寸」と針を離れぬ糸子の眼は、左の手につんと撮んだ合せ目を、見る間に括けて来て、いざと云う指先を白くふっくらと放した時、ようやく兄の顔を見る。
「まだあるのよ。兄さん」
「何だい。口だけでたくさんだよ」
「だって、まだあるんですもの」と針の針孔を障子へ向けて、可愛らしい二重瞼を細くする。宗近君は依然として長閑な心を頬杖に託して庭を眺めている。
「云って見ましょうか」
「う。うん」
下顎は頬杖で動かす事が出来ない。返事は咽喉から鼻へ抜ける。
「あし。分ったでしょう」
「う。うん」
紺の糸を唇に湿して、指先に尖らすは、射損なった針孔を通す女の計である。
「糸公、誰か御客があるのかい」
「ええ、甲野の阿母が御出よ」
「甲野の阿母か。あれこそ達者だね、兄さんなんかとうてい叶わない」
「でも品がいいわ。兄さん見たように悪口はおっしゃらないからいいわ」
「そう兄さんが嫌じゃ、世話の仕栄がない」
「世話もしない癖に」
「ハハハハ実は狐の袖無の御礼に、近日御花見にでも連れて行こうかと思っていたところだよ」