Classici giapponesi con furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Leggi 虞美人草 (ぐびじんそう) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.559 caratteri · 401 schermate
甲野さんは糸子の顔を見たまま、なぜの説明を求めなかった。糸子も進んでなぜの訳を話さなかった。なぜは愛嬌のうちに溺れて、要領を得る前に、行方を隠してしまった。
塗り立てて瓢箪形の池浅く、焙烙に熬る玉子の黄味に、朝夕を楽しく暮す金魚の世は、尾を振り立てて藻に潜るとも、起つ波に身を攫るる憂はない。鳴戸を抜ける鯛の骨は潮に揉まれて年々に硬くなる。荒海の下は地獄へ底抜けの、行くも帰るも徒事では通れない。ただ広海の荒魚も、三つ尾の丸っ子も、同じ箱に入れられれば、水族館に隣合の友となる。隔たりの関は見えぬが、仕切る硝子は透き通りながら、突き抜けようとすれば鼻頭を痛めるばかりである。海を知らぬ糸子に、海の話は出来ぬ。甲野さんはしばらく瓢箪形に応対をしている。
「あの女はそんなに美人でしょうかね」
「私は美いと思いますわ」
「そうかな」と甲野さんは椽側の方を見た。野面の御影に、乾かぬ露が降りて、いつまでも湿とりと眺められる径二尺の、縁を択んで、鷺草とも菫とも片づかぬ花が、数を乏しく、行く春を偸んで、ひそかに咲いている。
「美しい花が咲いている」
「どこに」
糸子の目には正面の赤松と根方にあしらった熊笹が見えるのみである。