Classici giapponesi con furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Leggi 虞美人草 (ぐびじんそう) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.559 caratteri · 401 schermate
家を持っても楽に暮せる」
小野さんはまた返事のしようがなかった。
東京は物価が高いと云いながら、東京と京都の区別を知らない。鳴海絞の兵児帯を締めて芋粥に寒さを凌いだ時代と、大学を卒業して相当の尊敬を衣帽の末に払わねばならぬ今の境遇とを比較する事を知らない。書物は学者に取って命から二代目である。按摩の杖と同じく、無くっては世渡りが出来ぬほどに大切な道具である。その書物は机の上へ湧いてでも出る事か、中には人の驚くような奮発をして集めている。先生はそんな費用が、どれくらいかかるかまるで一切空である。したがって、おいそれと簡単な返事が出来ない。
小野さんは何を思ったか、左手を畳へつかえると、右を伸して洋灯の心をぱっと出した。六畳の小地球が急に東の方へ廻転したように、一度は明るくなる。先生の世界観が瞬と共に変るように明るくなる。小野さんはまだ螺旋から手を放さない。
「もう好い。そのくらいで好い。あんまり出すと危ない」と先生が云う。
小野さんは手を放した。手を引くときに、自分でカフスの奥を腕まで覗いて見る。やがて背広の表隠袋から、真白な手巾を撮み出して丁寧に指頭の油を拭き取った。